「生命の質重視か?生命の尊厳か?」などと問われても なんのことかピンとこないほうが普通である。 しかし次のような事例を示されると問題の深さがわかり、 考え込むのではないだろうか。 もちろんこれは架空のできごとで、事実に基づくものではない。
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本岡医師は悩んでいた。
先週生まれた新生児に重い先天性の障害が見つかっていた。
それと同時に、簡単な手術で直る疾患も発見された。
その疾患のほうをほったらかしにして治療しないでいると、
長くてあと1週間の命である。
手術をすれば寿命をまっとうできるし、その成功率も高い。
ただその場合でも重い先天性の障害は残り、
介護者なしで生きていけるようになる可能性はゼロである。
このことを本岡医師は2日前に両親に告げた。 両親は1日考えた結論として治療を拒否したのである。 表面上は「自然にまかしたい、 手術などして無理やり生き延びさせるのは忍びない」 と言っているが、 これから重荷を背負って生きていくのがいやで治療を拒否していることは 明らかだった。 本岡医師は言った。 「この子よりずっと重い障害を背負って生きている人はいくらでもいます。 この子にチャンスを与えてやってはくれませんか。」 両親の反応は固かった。 「この子の世話をして生きていかなければならないのは私たちです。 先生ではありません。」 手術には両親の同意が本来は必要である。 しかし内緒で手術してしまって、両親には自然に治癒したことにしてしまおうか、 とまで悩む本岡医師であった。 |