関係事実だけを抽出すること
事例の分析では、まず関係事実だけを抽出しなければならない。
II.4.であげた事例の始めの部分に、
「山根君は優秀な学生で、夏目教授の研究室のネットワーク管理者を任されていた。」
と書かれている。
さて、これは関係事実であろうか。
ネットワーク管理者であったから、町田さんがホームページを開いていないことが
気になったのかもしれない。
そして優秀だからネットワーク管理者を任されていたのかもしれない。
だが、そのことが分析結果に影響を与えて良いのだろうか。
法の世界では、すなわち罪の重さを決める際には、情状酌量がなされる。
だがモラルの分析は罪の重さを調べるのではない。
どこに問題があったのか、どのように振舞うべきだったのか、
を調べるのである。
ネットワーク管理者だから勝手に他人のホームページを開いて良いわけがない。
まして優秀な学生だからそんなことをしても良いなどという論理はありえない。
結論として、この事実は無関係として切り捨てて分析を進めなければならない。
この夏目教授は山根君をかばいたくてしょうがないようである。
その理由が山根君が優秀だからというのであれば、
それははっきりとした間違いである。
ただ夏目教授には、「自分が山根君にネットワーク管理者を任せたがために
こんなことになった」という思いがあるのかもしれない。
しかし、山根君のモラルを問うとき、それも忘れるべきであろう。
事例研究用の「事例」ではすでに関係事実だけが抽出されて、
それだけが書かれていたりする。
しかし実際の場面では、
「彼は苦学生だ」とか「もう就職が決まっている」とか、
他にも多くの事実が一緒に見えてくる。
関係事実だけを抽出すること自体が重要な作業となることが多い。
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