カネミ油症事件:カネミ倉庫の米ぬか油製造工場で、熱媒体に使っていたPCBが油に混入。68年、皮膚炎や内臓疾患を訴える利用者が続出した。03年6月現在、生存する認定患者は31都道府県で1362人。厚労省の02年度調査では、患者のPCDF血中濃度は一般の人の12.6倍。
全国で約1万4千人が被害届け出て。わが国最大の食品公害とされるカミネ油症事件。発症から35年後の今秋、厚生労働省は患者の認定基準について、ポリ塩化ビフェニール(PCB)を中心とした基準を見直し、体内に高濃度で残るダイオキシン類を追加する方針を決めた。認定患者が増えるのは確実だが、認定されたとしても救済策は十分とは言い難い。
「68年に生まれた娘は眉や髪に油がびっしりついていて、赤黒い赤ちゃんでした。2年後に生まれた息子も、だんだん黒くなりました」。東京都内で11月29日に開かれたカネミ油症35周年市民集会。女性患者は声を震わせながら語り始めた。
出産後、ニキビ状の吹き出物が顔や胸、背中などに広がった。体が水分を受付けなくなり、コップ一杯の水を飲むと2,3回トイレに駆け込んだ。夫や子供たちも原因不明の発熱などで苦しんだが、患者と認定されたのは自分だけだ。
今の認定は@PCBの種類ごとの血中濃度がカネミ油症特有のパターンを示すA重い皮膚炎や色素沈着といった症状がある――などが条件だ。だが時間がたつと症状が薄らぐため、近年はほとんど認定されていない。
しかし、最近の調査でPCBが加熱されてできるダイオキシン類の一種で猛毒のポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の血中濃度が、油症患者では高いことが判明。厚労省は9月、PCDFを含むダイオキシン類の血中濃度が高ければ、臨床症状にかかわらず認定する方針に決めた。基準値は来年度定める予定だ。
専門家の間では70年代から「ダイオキシン類が主因では」と指摘されていた。油症医療恒久救済対策協議会の矢野忠義会長(71)は「国が本気になれば、もっと早くできた」と話すが、厚労省企画情報課の桑島昭文課長補佐は「検査技術が近年進歩し、少量の血液から誤差も無く測れるようになった」という。
認定されると、原因企業のカネミ倉庫(本社・北九州市)から医療費や通院費が補償され、請求すれば22万円の一時金が支払われる。
カネミは87年当時、年間約1億2千万円を保障していたが、経営が苦しいとしてマッサージや健康食品の購入費などは補償対象から外した。額は一億円を割り込んだ。
新基準による認定患者への対応についても「基準ができた時点で考える」としており、現時点では不透明だ。
同じ食品公害でも「森永ヒ素ミルク中毒事件」の対策は手厚い。森永乳業などがつくった財団法人はカネミと違い、医療費、通院費だけでなく、介護料、生活手当など年間16億円の救済資金を全額出している。
小学2年で発病した女性患者(42)は「患者救済の新たな法律をつくってほしい」と訴える。
福岡県に住む未認定の女性(46)は、胆嚢炎や低血圧、痛風、子宮障害に苦しんできた。内臓疾患や生殖障害はダイオキシン類の慢性毒性と関連が疑われる。「因果関係が明らかになれば、ごみ焼却場などダイオキシン問題一般にも広く警鐘をならせるのでは」という。
厚労省は今後もダイオキシン類の血中濃度と症状に関する調査を進める。ダイオキシン問題に詳しい摂南大の宮田秀明教授は「詳細な問診をするなど患者の症状をきめ細かくすくい取るべきだ。汚染から30年以上たった現状に適した検査が求められる」と指摘している。
(奥田誠)
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