黄金律の誤解
黄金律を一口で言うなら、
「自分の望むことを人にせよ」
または
「自分の望まないことを人にするな」
である。
非常に簡単である。
しかしこれだって適用を間違えることはある。
吉野君の悩み
吉野君は東大システム創成学科の博士課程を修了後、UT開発に入社し、
排煙処理関係の技術の開発を続けていた。
周囲の期待も大きく、若いながら事実上そのプロジェクトのすべてを任されていた。
彼の直属の上司である藤田課長は、
吉野君の見る限りでは技術者としてあまり優秀でなく、
このプロジェクトに関しては吉野君の言うことをさらに上の水田部長などに
そのまま伝えるだけであった。
吉野君の悩みは、藤田課長が技術的内容をしっかりと理解しないまま
水田部長などに伝えるので、うっかりすると間違った情報が伝わることである。
先日も、開発中の装置の性能が1けた近く間違って伝えられていたことを
水田部長から教えられ、びっくりしたところであった。
ある日、吉野君は藤田課長に呼ばれた。
県のごみ処理施設の入札にあたり、開発中の装置を採用することになったという。
吉野君の考えでは期限までに開発は間に合わない。
その旨を伝えたが、藤田課長は「なんとかなるよ」と取り合わない。
吉野君としては彼の考えを水田部長に伝えたい。
しかし藤田課長は、部下が部長に直訴することを極端に嫌う。
「藤田課長がもっとも嫌う事をするのは黄金律に反するよなあー」
と思う吉野君であった。
吉野君は明らかに黄金律を誤解している。
黄金律は「自分の望まないことを人にするな」であって
「人が望んでいないことをその人にするな」ではない。
それでは間違いを正すことはまったくできなくなってしまう。
この場合はまだ外部の人に迷惑を掛けることになるかどうかはっきりしていないが、
迷惑を掛けることがはっきりしたときも遠慮していていいのだろうか。
実力がないのに口出しをしたがる人は多い。
嫌がられようとも、そのような人にも直言しなければならない。
聞き入れられなければ、さらにその上司に直訴するのも当然である。
一般に組織はピラミッド構造になっていて、上の者ほど大きな権限を持つとともに、
重い責任を負わされる。
上の者がときには「そんなことはお前たちで処理しろよ」と言うこともあるだろう。
しかしそれが難しい問題であり、処理を間違ったとき上の者に責任がいく場合、
勝手に処理すべきではない。
難しさを上の者にちゃんと認識してもらって、それでもなお任せてもらえるのか、
確認すべきである。
「失敗したら自分だけで責任をとればいい」なんていう
妙に粋がった考えが間違いなのは明らかである。
「こんなことをいちいち相談したらうるさがられる」
「『責任は上にも行きますよ』などという脅しはとんでもない」
などという独り善がりの上司への思いやりはちっとも倫理的ではない。
皆さんは当然、よい上司になるだろう。
その、理想の上司なら何を望むか、その理想の上司が望むことをするようにすることが
黄金律に沿った行動である。
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