産経新聞 敦賀版 H11.12.22

'99現場から(7)

敦賀原発2号機事故

情報公開で信頼を

誤解を恐れずに書けば、 これほどすがすがしい思いの残る原子力発電所の事故取材は初めてだった。

七月に福井県敦賀市の日本原子力発電敦賀原発2号機 (加圧水型軽水炉、出力一一六万キロワット)で発生した一時冷却材漏れ。 定期検査のあり方など改善すべき点はあったが、当時の考え方や規定の中では、 だれひとりミスらしいミスをしていなかった。 運転操作から事故後の対応まで、 関係者一人ひとりが自らの仕事に忠実に取り組んでいた。

過去の原子力施設の事故の多くは、 「ヒューマン・エラー」がどこかに潜んでいた。 旧ソ連チェルノブイリ原発事故(一九八六年)や 米国スリーマイル島原発事故(一九七九年)など、 海外の重大事故はもちろん、九月三十日に茨城県東海村で発生した臨界事故も、 原子炉等規制法違反のバケツを使うという単純な人為ミスに起因している。

当然、敦賀2号機事故でも、「どこかに誤りがあるにちがいない」。 そう思って運転操作と製造過程、公表される情報を見た。

   *  *

「運転操作」では、 公表された運転記録を持ってさまざまな原子力関係者に取材した。 最終的には、原子力発電訓練センター(敦賀市)で 事故直後の中央制御室(運転室)の様子を再現してもらい、 今回取られた手動による緊急停止が、 「送電系統への影響も考慮した良い操作」(大須賀安彦・訓練部担当部長) との評価に納得した。

当時と同じ操作だと、中央制御室の警報は数分に一度の割合でしか鳴らず、 冷却水漏れの状況把握や原子炉のコントロールが容易だった。 が、ボタン一つで機械的に原子炉をいきなり止めると、 数十の警報が一斉に鳴り響き、その後の状況把握は難しくなった。

「製造」段階では、 漏えい個所の再生熱交換器を中心にさまざまなミスの可能性が考えられた。 しかし、金属材料から配管の加工、組み立てに至るまで、 誤差の範囲から逸脱するような誤りはなかった。

あえて言えば、熱疲労を生まないためには、 常識的なレベルの加工誤差すら許されなかった "きわどい設計"そのものに問題があったといえる。

そして「情報」。 今回の事故で、通報遅れや情報隠しといった指摘はない。 平成七年十二月に発生した旧・動燃(現・核燃料サイクル開発機構)の 高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)のナトリウム漏れ事故から、 情報を混乱させると社会的な事件になることを教訓として学んでいたからだ。

実は事故の二日目に、 一次冷却水の回収や除染作業の状況が発表内容とずれ始めたのだが、 すぐに全作業をいったん中止して計画が練り直され、情報の混乱が回避された。

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原発事故というと、だれしも目に見えぬ放射能を連想して不安になる。 だが、関係者が個々の責任をきちんと果たし、施設外に放射能を漏らさず、 情報を正しく早く国民に伝えることができた事実は、評価してよいのではないか。

すべての原子力関係者が隠す必要のない誠実な仕事をまっとうすることが、 国民に安心感をはぐくむ近道であるように思う。

(福井支局 石毛紀行)

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