技術者はものを設計するとき普通、
技術基準(技術・設計−基準・規格・標準・指針)
(design code・design guidline)に従う。
技術基準にはいろいろなものがある。
例えば
JIS(日本工業規格)は
工業標準化法に基づく国家規格で、様々なことを定めている。
工業製品の多様化の調整(互換性の確保)のような機能と並んで大きい機能に、
品質の明確化がある。
メーカーはJISマークをつけることで、その製品がどのような品質であるか
に関する説明責任の一部を果たすのである。
「品質維持のため、試験としてこんなことをしている」という説明の責任は、
JIS合格で代用できる。
機械構造物をこわれないようにきちんと設計したことを細かく述べる代わりに、
ASME(米国機械学会)コード
に従って設計したと説明する。
機械設計の分野ではASMEコードはバイブルである。
ただ、なんで米国機械学会なんだ?というところが問題である。
実はようやく
日本機械学会も技術基準作りに
本腰を入れだした。
しかし米国に比べると大きく遅れているのである。
米国では技術者が自主的に基準を作り、政府はそれを行政に取り入れる
という形で規制が行われてきた。
一方、日本では行政に必要な基準は政府自身で作るのが原則であった。
政府がじきじきに規制のための基準を作ってくれたほうが安心と思うかもしれない。
しかしその場合の政府とは誰か。
現場を知らないお役人にどれだけ技術基準の能力があるか。
政府の能力を高めようとすると、とてつもなく大きな政府が必要となり、
税金も高くなる。
一番よく分かっている現場の技術者自身が基準を作り、
そのよしあしだけを政府が判定したほうが安上がりの上に
良いものもできる。
政府がじきじきに基準を作ると、改訂に時間がかかり、技術の進歩を阻害するという
問題もある。
さらには、政府が作った基準通りの製品でないと使ってはいけないということにすると、
これが非関税障壁となり、WTO(世界貿易機構)の
TBT(Technical Barriers to Trade)協定違反になる可能性もある。
このようなことから、政府は技術が満たしていなければならない条件、
すなわち必要な「性能」だけを規定し、
その性能をどのように満たすかという「仕様」については
民間が定めた規格を政府がチェックして使うというのが国際的ルールとなっている。
規制基準の性能規定化と民間規格の活用はセットなのである。
説明責任の問題に戻ろう。
高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故を覚えているだろうか。
「これからは気をつけます」と繰り返すだけではいけない。
どのように気をつけるのかが問題なのである。
「もんじゅ」の例では、「これからは
日本機械学会基準
に従って設計するようにします」と言ってこそ、
具体的にどのように気をつけるのかが分かるのである。
それを示すことは技術者の説明責任でもある。
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